皆さまこんにちは。
大阪府堺市に拠点を置き、関西を中心に排水処理設備の保守・修繕をはじめ、電気・配管・計装工事など一貫して対応しているエスプラントサービスです。
製造工場における排水処理設備の中でも、生物処理槽はもっともトラブルが起こりやすい工程です。微生物の働きに依存したプロセスであるため、原水の負荷変動や運転条件の影響を受けやすく、わずかな変化でも処理水質が大きく悪化することがあります。特に食品工場では、油脂・タンパク質・洗浄剤などの影響を強く受けやすく、日々の運転管理が水質を安定させる鍵となります。
本記事では、生物処理槽で頻出する代表的なトラブルを取り上げ、原因と現場レベルで実施できる対策を詳しく解説します。
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1. pH・温度・負荷のショックによる処理不良
生物処理槽のもっとも代表的なトラブルが「ショック負荷」です。これは、微生物が処理能力を保てる範囲を超えた急激な変化によって、槽内のバクテリアがダメージを受けたり死滅したりする現象を指します。
原因
・原水のBOD/CODが急上昇
・工程変更による高濃度排水の一括流入
・洗浄剤・殺菌剤の混入による微生物の失活
・pHの急変(酸・アルカリの原液流入)
・温度の上昇(40℃前後で急激に処理能力が低下)
食品工場では、製造終了後の一斉洗浄により高濃度排水や薬剤が短時間に流入しやすく、ショックのリスクが高い傾向があります。
兆候
・MLSSが急激に低下
・DOの消費が弱くなる
・フロックが小さくなり沈降しなくなる
・処理水が白濁、濁度上昇
・悪臭(嫌気化)
対策
・原水調整槽での均質化(撹拌強化、24時間混合)
・高濃度排水の時間分散投入
・洗浄剤の種類・使用量の管理
・pH連続監視とアラーム設定
・温度上昇時は原水希釈や冷却の実施
ショック負荷が生じた後は、返送汚泥量を適正化して微生物の回復を優先させることが重要です。
2. 生物処理槽の悪臭発生
排水処理施設の臭いトラブルの多くは、生物処理槽の運転不良が原因です。特に曝気が不足すると、槽内が嫌気化し、硫化水素・メルカプタンなどの悪臭物質が発生します。
原因
・ブロワの能力低下、フィルター詰まり
・散気管の目詰まり
・水深の変化による曝気不足
・MLSS過剰による酸素不足
・池底の汚泥堆積による嫌気化
食品工場では油脂が微生物の周囲を覆う「スカム化」が発生しやすく、酸素移動が阻害されて臭いの原因につながります。
兆候
・曝気表面の泡が黒ずむ
・DOが1.0 mg/L以下に低下
・曝気しているにもかかわらず臭いが強い
・水面のスカム増加
対策
・ブロワ吐出量の点検・フィルター清掃
・散気管の定期エア抜き・洗浄
・MLSS濃度の適正化(一般的には2,000~6,000mg/L)
・池底の汚泥引き抜き
・浮上スカムの定期除去
臭気問題は近隣クレームにつながるため、もっとも優先度の高い運転項目と言えます。
3. 泡の異常発生(発泡トラブル)
近年増えているのが「泡の異常発生」です。特に食品工場では、界面活性剤や洗浄成分が多いため、軽度の負荷変動でも泡が大量に発生しやすくなっています。
原因
・洗浄剤・界面活性剤の流入量の増加
・MLSSの破壊(フロックが小さい)
・微生物バランスの崩壊
・低負荷運転による増粘性のスライム発生
・糸状菌の増加
兆候
・曝気表面に白い軽い泡が広範囲に広がる
・泡が風で飛散して周辺を汚染
・槽壁から溢れそうになる
・沈殿槽での固液分離が悪化
対策
・洗浄工程の使用水量や時間を平準化
・界面活性剤の種類変更を製造部と協議
・疎水性バクテリアの育成(高負荷側の調整)
・必要に応じて消泡剤をスポット投入
・糸状菌の場合はF/Mの改善やDOの適正化
泡は「見た目の問題」と軽視されがちですが、実際には生物処理のバランスが崩れている強いサインであり、ほとんどの場合は根本原因に手を入れる必要があります。
4. まとめ:生物処理槽の安定運転に必要な視点

生物処理槽のトラブルは、一つの原因だけで起こるものではなく、複数の要素が重なって発生します。特に以下の3点は、どの工場でも共通して重要なポイントです。
① 原水負荷の平準化が最も重要
調整槽の撹拌・滞留・均質化は、すべてのトラブル予防の基盤になります。
ショックを起こさせない運転こそが最も効果的な対策です。
② DO・MLSSは毎日記録し、微生物の“変化”を見る
* DO:1.5〜3.0 mg/Lを目安
* MLSS:槽の設計値に応じて調整
* 臭い・色・泡の状態を毎日確認
微生物は急激に変化するため、日々のトレンド管理が不可欠です。
③ スカム・沈積物は早期除去する
槽内の滞留・嫌気化は全てのトラブルを加速させます。
定期的な引き抜き・清掃を計画的に行うことで、設備寿命も延びます。
5. 生物処理槽の課題を根本から解決するために ― エスプラントサービスのサポート

生物処理槽のトラブルは、日常点検だけでは防ぎきれないケースも多く、
「原因が分からないまま水質が安定しない」
「現場で対応しているが根本解決に至らない」
といった悩みを抱える工場は少なくありません。
特に、食品工場や化学・樹脂系の工場では原水の変動幅が大きく、
・曝気不足
・スカム増加
・泡の異常発生
・MLSSの急変
これらの現象が繰り返し発生しがちです。
こうした「慢性的な処理不良」の多くは、設備と運転の両面から総合的に見直すことで解決できますが、現場の担当者だけで実施するのは容易ではありません。
エスプラントサービスが選ばれる理由
エスプラントサービスでは、
「いまここにある問題を解決する」
という理念のもと、食品・化学・金属加工など幅広い業種の排水処理設備を支援してきました。
特に以下の点で高い評価をいただいています。
1. 現場を徹底して“診る”水質改善提案
生物処理槽の状態は、見た目やMLSSの数値だけでは判断できません。
当社では、以下を総合評価し、原因を特定します。
・DO・pH・ORPなどの運転データ
・返送汚泥量とフロック状態
・曝気の分布・散気管の詰まり
・原水の負荷と工程変動
・汚泥沈降性(SV30、フロックの顕微鏡観察)
処理不良の「本当の原因」を明確にした上で、設備改善と運転改善の両方を提案します。
2. 設計・施工・保守を一貫して対応
生物処理槽のトラブルは、ブロワや散気設備などの機械的な老朽化が原因となるケースも多くあります。
エスプラントサービスでは、
・ブロワ更新
・散気管交換
・池底汚泥の引き抜き
・薬注設備の見直し
・調整槽撹拌の改善
など、小規模な改修からシステム入れ替えまで一貫して対応可能です。
3. 中堅規模の工場に最適化した“現実的な改善プラン”
売上10~100億規模の製造工場では、
「理想の改善案」よりも
“予算と人員に合う改善案”
が求められます。
当社は、現場担当者様とのコミュニケーションを大切にし、
・月々のランニングコスト
・担当者の手間
・設備の寿命
・将来の増産リスク
これらを総合的に踏まえた “実務ベースの改善策”をご提案します。
● このような課題があれば、ぜひご相談ください
・生物処理槽の臭気が強く、原因が分からない
・MLSSが安定せず、処理水が白濁しやすい
・槽のどこかが嫌気化している気がする
・糸状菌が増えてスカムが減らない
・装置が古く、散気やブロワに不安がある
・監視項目が多く、担当者の負担が大きい
現場調査から原因分析、改善提案までワンストップで対応します。
排水処理に関するお悩みは、早期に対策することで大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
「とりあえず見てほしい」「一度相談したい」といった段階でも問題ありません。
エスプラントサービスは、現場に寄り添いながら“安定して流せる排水処理”を一緒に実現します。
お問い合わせは、以下のページからいつでも受け付けています。
まずはお気軽にご相談ください。
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