排水処理設備で「泡が止まらない」原因と対策

皆さまこんにちは。

大阪府堺市に拠点を置き、関西を中心に排水処理設備の保守・修繕をはじめ、電気・配管・計装工事まで一貫して対応しているエスプラントサービスです。


工場排水処理設備の運転管理に携わる方なら、一度は「処理槽の泡がなかなか止まらない」というトラブルに直面したことがあるのではないでしょうか。

泡が消えずに表面を覆ってしまうと、見た目が悪いだけでなく、処理能力の低下、悪臭の発生、薬品使用量の増加など、さまざまな問題を引き起こします。長期的には操業コストの上昇や法令基準の逸脱リスクにつながる可能性もあるため、早期の原因究明と適切な対策が重要です。


本記事では、泡が止まらない現象が起こる仕組みと主な原因、現場でできる確認ポイント、そして具体的な改善策について整理していますので、ぜひ最後までご覧ください。


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■なぜ「泡が止まらない」のか?


排水処理設備において泡が発生すること自体は自然な現象です。曝気槽ではブロワから供給される空気によって酸素が溶け込み、その際に細かい気泡が生じます。通常であれば、この泡はすぐに消えて水面は安定します。


しかし、排水の性状や運転条件によっては、泡が安定して残り続ける状態になります。いわゆる「泡が止まらない」状況です。これが長時間続くと、処理フロー全体に悪影響を及ぼし、トラブルの火種となります。


そこで、まずは泡を引き起こす代表的な要因を整理してみましょう。



■泡が止まらない主な原因


1. 界面活性剤の混入

工場排水の中でもっとも多い原因の一つが、界面活性剤の流入です。洗浄工程で使用される洗剤や切削油、防錆剤などに含まれる成分は、気泡を安定化させる性質を持っています。そのため一度流入すると、曝気によって細かい泡が次々と発生し、なかなか消えません。


典型例:

・食品工場での洗浄剤残渣の流入

・金属加工工場での切削油の混入

・自動車関連工場での防錆剤洗浄液の流入


2. 過剰曝気

処理槽に供給する空気量が多すぎると、必要以上に細かい気泡が発生し、泡立ちやすくなります。特にブロワ能力が槽容量に対して大きすぎる場合や、水深が浅いのに風量を過剰に供給しているケースで発生しやすい傾向があります。


3. MLSS(活性汚泥濃度)の不均衡

活性汚泥法では、微生物群(フロック)が有機物を分解しています。このバランスが崩れると、フロックが形成されにくくなり、結果的に泡が安定して残りやすくなります。


汚泥過多:余剰汚泥を適切に引き抜いていない

貧栄養状態:COD負荷に比べて窒素・リンが不足している


4. 油分の流入

排水に含まれる油分は水面に薄い膜を作り、泡の消泡を妨げます。乳化油の場合はさらに分離しにくく、処理槽に長期間残存し続けることもあります。



■現場で確認すべきポイント


泡が発生したとき、闇雲に薬剤を投入するのは得策ではありません。まずは以下の点をチェックし、原因を切り分けることが大切です。


1. 工程の変化

 最近、洗剤や薬品の種類を変更していないか?

2. 曝気条件

 ブロワ吐出量は槽に対して適正か? 水深に応じた風量調整はできているか?

3. MLSS・SV値の測定

 活性汚泥濃度が過負荷や貧栄養状態になっていないか?

4. 前処理設備の状態

 スクリーンや油水分離槽は目詰まりしていないか? スキマーは正常に動いているか?


この基本確認だけでも、原因の方向性をある程度絞り込むことが可能です。



■具体的な対策例


界面活性剤対策

工程改善:洗浄方法や使用薬剤の種類・濃度を見直す

希釈・回収工程の導入:界面活性剤を含む排水を前処理で分離

処理剤の活用:消泡剤の添加(応急処置的な手段)


曝気量の適正化

・ブロワ吐出量の調整

・ディフューザーの清掃・交換による気泡径の改善

・インバータ制御による自動調整


MLSS・汚泥管理

・定期的な余剰汚泥の引き抜き

・栄養塩(窒素・リン)の補給によるバランス改善

・汚泥沈降性の確認とSVI値管理


油分対策

・油水分離槽やスキマーのメンテナンス強化

・油吸着材の設置による流入油分の除去

・工程側での油分管理(ドレン排出の徹底)



■放置するとどうなるか?


「泡が止まらない」現象を軽視すると、以下のようなリスクがあります。


処理能力低下:酸素移動効率が悪化し、有機物除去率が下がる

悪臭の発生:泡が腐敗・酸敗して臭気を放つ

コスト増:薬品消費量・電力使用量の増加

法令違反のリスク:放流水質が基準を超過する可能性


特に工場排水は法令遵守が必須であり、トラブルを放置すると企業信用にも関わります。



■まとめ


「泡が止まらない」という現象は、

工程側の薬剤使用(界面活性剤・油分)

曝気条件の不適正

MLSSや栄養バランスの乱れ

といった要因が複合的に絡んで発生します。


現場での基本確認と一次対策で解消できる場合もありますが、根本的な解決には処理フローや設備設計、薬品投入条件まで踏み込んだ見直しが必要です。


私たちエスプラントサービスは、排水処理設備の保守点検から改善提案、改修工事まで一貫対応しております。

泡トラブルに対しては以下のようなサポートを行っています。


原因調査:現場水質分析、MLSS測定、曝気条件の確認

改善提案:薬品投入条件の最適化、ブロワ運転制御の見直し

設備改修:油水分離槽やスクリーンの強化工事、曝気槽の改造

継続的サポート:定期点検・モニタリングによる再発防止


一時的な対応にとどまらず、工程・設備・運転管理を含めた総合的な解決策を提案できるのが当社の強みです。

「泡が止まらない」「処理が安定しない」といったトラブルにお困りでしたら、ぜひお気軽にエスプラントサービスへご相談ください。


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