排水処理設備管理の「属人化」が引き起こすトラブル事例

皆さまこんにちは。

大阪府堺市に拠点を置き、関西を中心に排水処理設備の保守・修繕をはじめ、電気・配管・計装工事など一貫して対応しているエスプラントサービスです。


工場の排水処理設備は、製造業にとって「止めるわけにはいかない設備」のひとつです。

しかし、日々の製品生産や出荷に比べると優先順位が低く見られがちなため、管理が一部の担当者に任されきりになり、「属人化」の状態に陥っている現場も少なくありません。

この属人化が、思わぬトラブルやリスクを引き起こし、企業にとって大きな損失につながることもあります。


この記事では、排水処理設備の属人化がなぜ危険なのか、実際のトラブル事例とその解決策について解説します。



■排水処理設備にありがちな「属人化」とは?


まず「属人化」とは、特定の担当者にしかノウハウや現状把握がなく、その人がいなければ業務が立ち行かない状態を指します。


排水処理設備の管理は、以下のような理由から属人化しやすい傾向があります。


・水質調整や微生物管理に経験や勘が必要

マニュアルや記録が十分に整備されていない

人手不足で兼任している担当者しか見ていない

・設備の重要性が経営層に伝わりにくい


こうして属人化した管理は、表面上は「問題なく稼働しているように見える」ものの、いざという時に大きなトラブルを引き起こす温床となります。



■属人化による主なトラブル事例


実際に、中堅規模の製造業で発生した属人化トラブルの事例をご紹介します。


事例① 担当者の退職で水質事故が発生

ある機械部品メーカーの工場では、排水処理を長年一人のベテラン担当者が管理していました。

その担当者は点検記録も残さず、自分の感覚で運転を調整していたため、現場の設備状況を誰も把握できていませんでした。

そんな中、担当者が定年退職した後、引き継いだ社員が運転方法を理解できず、微生物管理がうまくいかずにBOD値が急上昇。水質基準超過で自治体から指導を受け、改善計画書の提出や追加コストが発生しました。


事例② 緊急時に対応できず操業停止

別の樹脂製品メーカーの事例では、設備のポンプが深夜に故障し排水処理が停止。

通常なら予備ポンプの切り替えや緊急対応が可能な仕組みでしたが、操作方法を知るのは担当者だけで、当直のスタッフは何もできず、半日以上排水処理が止まって工場も操業停止となりました。

結果、取引先への納期遅れで損害が発生し、担当者一人に知識が集中していたリスクが表面化しました。


事例③ 管理不十分で老朽化が見過ごされる

ある金属加工工場では、排水処理設備の管理が担当者の経験頼りでした。

定期的な診断も行われず、配管の腐食やポンプの性能低下が長年見過ごされ、突然の漏水事故で生産エリアが浸水。復旧に数百万円の費用がかかりました。

日常点検も曖昧で、老朽化の兆候を誰も把握していなかったことが原因です。



■属人化の問題点とは


属人化した管理は、以下のような問題を引き起こします。

属人化は、企業のリスク管理やBCP(事業継続計画)の観点からも大きな問題です。



■属人化を解消するための対策


属人化リスクを防ぐには、組織的な管理体制と外部の専門知識の活用が重要です。ここでは実践しやすい4つの対策をご紹介します。


対策① マニュアルと記録の整備

日常点検や異常時対応など、運転管理の内容を標準化し、誰が見ても分かるマニュアルを作成します。

また、運転データや点検結果は必ず記録に残し、履歴を管理することで異常の兆候を早期に把握できます。


対策② 定期的な教育・訓練

複数人が設備管理の基本操作や水質管理のポイントを理解できるよう、定期的に教育や訓練を実施します。

特に緊急対応の訓練は重要で、当直者や他部署のスタッフにも基本的な対応手順を共有しておきましょう。


対策③ 外部診断・メンテナンスの活用

排水処理の専門業者に定期的な診断やメンテナンスを委託することで、設備の状態を客観的に把握できます。

また、老朽化箇所や改善ポイントについても提案を受けられるため、設備更新の計画が立てやすくなります。


対策④ 管理業務のアウトソーシング

管理の負担が大きく、人材が不足している場合は、点検・運転記録・水質管理までを外部に一括で委託するという選択肢もあります。

属人化が解消され、担当者が退職しても安定した管理体制を維持できます。



■まとめ|属人化は放置せず、早めの対応を


排水処理設備は、製造現場の「縁の下の力持ち」です。

そのため、トラブルが起こるまで属人化の問題が表面化しにくく、いざ起きた時には損害が大きくなりがちです。


もし、以下のような状態に心当たりがあれば、早めの対策を検討しましょう。


✅ 設備の状態が担当者しか分からない

✅ 点検や運転の記録が残っていない

✅ 緊急時の対応手順が整備されていない

✅ 管理担当者の高齢化や退職予定がある


エスプラントサービスは、関西エリアを中心に、排水処理設備の点検・診断・修繕・管理業務のアウトソーシング等に一貫して対応しております。

設備管理の属人化に関する課題解決や、安定した運転管理の仕組みを構築するサポートをいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。



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